でんさいとは?メリット・デメリット、仕組み、手形との違いなどを解説

でんさい

近年、企業間取引のデジタル化が進み、紙手形や現金に依存しない決済手段が注目されています。その代表格が「でんさい」です。全国の金融機関をネットワークで結び、オンライン上で債権・債務をやり取りできるため、取引のスピードや透明性が向上します。

ここでは、普及の背景や導入のポイント、仕組み、メリット・デメリット、手形との違いを解説します。

でんさいとは?

そもそも「でんさい」とは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、概要と仕組みを解説します。

でんさいの概要

でんさい(電子記録債権)は、2008年施行の電子記録債権法に基づく新しい金銭債権で、手形や現金決済に代わり取引を電子的に記録・管理できます。印紙税が不要、書類紛失や郵送の負担がなく、分割譲渡も容易です。

全国銀行協会が運営する「でんさいネット」を通じ、多くの銀行・信用金庫などで利用でき、企業間決済を効率化できます。

でんさいの仕組み

でんさいは、債権・債務を電子的に記録し「記録原簿」で一元管理できます。発生は支払企業の請求により記録され、譲渡時は記録更新で権利移転でき、分割譲渡も可能です。

期日になると自動的に口座間で送金され、振込手続きは必要ありません。利用は主にインターネットバンキング経由で行われ、発生・譲渡・照会などがオンラインで簡便に操作できます。

でんさいのメリット

でんさいを利用するメリットは、以下のとおりです。

・紙手形に比べた利便性
・決済の迅速化・事務負担の軽減
・資金繰りの改善
・コスト削減
・セキュリティ・透明性

ここから、それぞれについて解説します。

紙手形に比べた利便性

でんさいは電子記録債権であり、紙手形に必要な印紙税が不要です。書類の物理保管や郵送が不要なため紛失・盗難リスクもありません。オンラインで発生から譲渡、確認まで処理できるため、場所や時間を問わず安全、かつ効率的に債権管理が可能です。

決済の迅速化・事務負担の軽減

でんさいは、支払期日になると自動的に口座間で資金が移動し、取立や振込の手続きが不要です。郵送や確認作業などの物理的なやり取りもなく、決済までの時間が短縮されます。経理部門の事務負担軽減と業務効率化を実現できます。

資金繰りの改善

でんさいは、譲渡や金融機関での割引を通じ、受取期日前でも資金化が可能です。また、債権を分割して一部のみ譲渡できるため、必要な金額だけ流動化でき、資金繰りの柔軟性が向上します。中小企業のキャッシュフロー改善にも有効でしょう。

コスト削減

紙手形では発行ごとに印紙税や郵送費、保管・管理にともなうコストが発生します。一方、でんさいはこれらが不要になるため、直接的な経費削減が可能です。さらに、業務効率化による人件費削減も見込め、トータルコストの削減効果が高い仕組みといえるでしょう。

セキュリティ・透明性

でんさいは発生から譲渡、決済までの全記録が「記録原簿」に残るため、権利関係が明確で改ざんも困難です。オンラインで照会・確認が可能であり、相手先や金融機関との情報共有も迅速。高い透明性と信頼性が担保されます。

でんさいのデメリット・注意点

でんさいには、以下のようなデメリット・注意点があります。

・導入初期の手間
・対応していない取引先との併用負担
・利用手数料の存在
・インターネット環境やITリテラシーの必要性

ここから、それぞれの内容を確認しておきましょう。

導入初期の手間

でんさいの利用を開始するには、システム利用契約の締結や、社内規程・業務フローの見直しが必要です。また、関係部署や従業員への周知・教育、マニュアル整備といった初期対応が避けられず、導入前後で一定の時間と労力がかかります。

対応していない取引先との併用負担

一部の取引先がでんさいに未対応の場合、従来の紙手形や振込と併用しなくてはなりません。その結果、管理や処理が煩雑になる可能性があります。業務フローや帳票管理の二重対応が発生し、運用負担が増加するケースもあり得るでしょう。

利用手数料の存在

でんさいネットを利用するには、発生・譲渡・割引など各種手続きごとに手数料が必要です。従来の紙手形に比べてコストダウンできる面もありますが、利用頻度や事業規模によっては費用負担を感じる場合もあるため、事前に検討する必要があります。

インターネット環境やITリテラシーの必要性

でんさいの主要な利用方法はインターネット経由での操作であり、パソコンやネット環境が必須です。また、担当者には一定のITリテラシーが求められるため、従業員教育やサポート体制の強化もポイントです。IT環境未整備の企業には、障壁となり得るでしょう。

手形との違い

手形とでんさいの主な違いは下記のとおりです。

比較項目手形でんさい
発行・譲渡・決済方法書面で振出・裏書・銀行決済オンライン記録・譲渡・自動決済
印紙税の有無必要不要
紛失・盗難リスク紛失・盗難の恐れあり物理的に存在せずリスクなし
取引記録の確認方法書面・帳票や銀行照会が主ネットで即時履歴照会が可能

でんさいは「電子記録」のため発行・譲渡・決済がオンラインで完結し、手形のような印紙税が不要です。現物がなく紛失・盗難リスクもありません。さらに、各取引記録はオンラインで即時に確認でき、透明性が高いのも特徴です。

でんさいの導入方法

でんさいを導入する場合、事前に書類の準備や取引先への説明などが必要です。ここでは、でんさいの一般的な導入方法をご紹介します。

利用開始までの流れ

でんさいの導入は、おおまかに「金融機関との契約」「システム設定」「運用開始」の3ステップです。

まず、取引先金融機関に申し込みを行い、所定の審査・契約締結・利用者番号の発行などを経て利用準備が整います。その後、社内システムの初期設定や関係者(権限者など)の登録を実施します。準備が完了したら、実際の債権発生や譲渡などの運用を開始することが可能です。

導入直後は、グループ企業や主要取引先のみで試験運用を行い、管理や操作の流れを社内で習熟したうえで本格運用へ進めるのが一般的です。

必要書類や条件

でんさいの申し込み時には「でんさい利用申込書」「利用者情報の取扱いに関する同意書」などのほか、法人の場合は「商業登記簿謄本」「印鑑証明書」「担当者の本人確認書類」などが必要です。(個人事業主は住民票や確定申告書など)

所定の審査を通過し、通知書が届くと利用者番号や初期情報が付与されます。金融機関によって必要書類に若干の違いがあるため、事前に取引銀行へ確認しなくてはなりません。

取引先への説明・同意取得のポイント

自社だけでなく、主要な取引先にも「でんさいネット」への同意・導入が必要です。導入時には、取引先に対して切替案内状を発送し、電子記録債権への移行にともなう事務フローやメリットなどを丁寧に説明しましょう。

回答状況を取りまとめ、同意の得られた先から順次オンライン運用へ移行するのがポイントです。取引先にも導入ハードルや疑問がある場合は、パンフレットやサンプル案内などを活用し、不明点の解消や導入支援に努めるとスムーズでしょう。

でんさいのよくある質問

ここからは、でんさいに関するよくある質問と回答をご紹介します。

Q1.途中で紙手形に切り替え可能?

既に発行済みのでんさいは、紙手形に変更できません。紙手形からでんさいへの移行も同様で、契約や運用の切り替えは次回以降の取引から時期を区切って案内する必要があります。したがって、既発行分を交換方式で変換できません。

Q2.複数銀行をまたぐ利用は可能?

でんさいネットのシステム上、複数の金融機関を利用することは可能です。ただし、それぞれの金融機関で利用契約が必要な場合があり、債権や債務の記録内容確認(開示請求)は契約ごとに行う必要があります。また、決済口座も複数登録できますが、取扱いは金融機関ごとに異なるため確認が必要です。

Q3.複数銀行をまたぐ利用は可能?海外取引での利用可否は?

複数銀行間での利用は可能だが、開示や管理が個別契約単位になる点に注意しなくてはなりません。なお、海外取引での利用については、でんさいネットは日本法上の電子記録債権の仕組みで運用されており、原則として国内取引が対象です。

海外との直接的な利用はできませんが、個別に対応可能な金融機関があるかは取引先や金融機関へ相談しましょう。

Q4.複数銀行をまたぐ利用は可能?トラブル時の対応方法は?

複数銀行利用時、システム障害やトラブルなどが発生した場合、でんさいネットはバックアップ体制を備えています。債権・債務の記録内容に誤りがあった場合などは、発生後5営業日以内なら取消や訂正が可能です。

支払不能などの場合は、契約金融機関やでんさいネットにて所定の手続きで対応できます。まずは、利用している各金融機関へ連絡することが大切です。

まとめ

でんさいは、印紙税や郵送コストの削減、紛失防止、分割譲渡や自動決済による業務効率化など多くの利点があります。一方で、導入時の準備や未対応先との併用、利用手数料、IT環境整備といった課題も存在します。こうした制度や運用の検討には、資金繰りや税務面の視点も欠かせません。専門家の助言を得ることで、自社に最適な活用方法を見極めやすくなります。

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この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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