中小企業の税制優遇おける具体的な措置とは?令和5年度の改正ポイントも紹介

中小企業税制優遇

中小企業は税制優遇が受けられるため、有効活用すべきです。ただし、具体的にどのような内容で、またどのような条件なのかを知らない方はいるかもしれません。

一方、令和5年度の法改正にともない、中小企業の税制優遇に一部影響を与える部分もあります。ここでは、中小企業の税制優遇における具体的な措置と、令和5年度の改正ポイントについて解説します。

中小企業税制の概要

中小企業の税制優遇とは、中小企業の経営を支援するために、税金の負担を軽くする制度のことです。例えば法人税率を低くしたり、赤字を翌年に繰り越したり、設備投資や研究開発にかかる費用を経費化できます。

これらの制度を利用することにより、中小企業は資金繰りや事業展開に余裕ができるでしょう。

中小企業の税制優遇における具体的な措置

中小企業向けの税制優遇はさまざまなものがあります。ここでは、具体的な措置について確認しておきましょう。

法人税率の軽減

中小企業の税制優遇における具体措置の1つが、法人税率の軽減です。資本金1億円以下の中小企業は、年の所得が800万円以下の部分は15.0%、800万円以上の部分は23.2%となる措置が受けられます。

中小企業者等の法人税率は、年800万円以下の所得金額について19%に軽減(本則)されることが普通です。租税特別措置において、法人税は15%まで軽減されていますが、その適用期限を2年間延長してもらえます。

この措置は、大企業に比べて自己資本が少なく、倒産リスクの高い中小企業を支援するために行われているものです。よって、この措置を受けるためには、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人、資本もしくは出資を有しない法人であることが要件とされています。

ただし大企業の100%子会社は、資本金が1億円以下でも法人税率の軽減は受けられません。

欠損金の繰越控除

青色申告をしている中小企業は、赤字が発生した場合に翌年以降、10年間に渡り欠損金を繰越できます。この措置は、経営環境の変化や事業展開に伴う赤字を負担軽減することが目的です。なお、この措置を受けるためには、青色申告書を提出する法人である必要があります。

ただし、大企業(資本金1億円以上の法人や大法人による完全支配関係がある法人など)は、繰越控除前の所得金額の50%が控除限度額です。また、会社更生手続きや再生手続きなどによる債務免除等があった場合や解散事業年度の場合などには、欠損金の繰越控除の規定が適用されない場合もあります。

少額減価償却資産の特例

青色申告をしている中小企業者などが、取得価額が30万円未満の減価償却資産を令和6年3月31日までに取得して事業の用に供した場合に、その取得価額に相当する金額を損金の額に合計300万円までに限り即時に全額経費化することが可能です。この措置は、中小企業者等の設備投資を促進するために行われています。

この措置を受けるためには、免税店としての許可を取得している事業者であることが必要です。ただし、大企業や適用除外事業者(所得金額の年平均額が15億円を超える法人など)は、この特例の対象外とされています。また、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産や一括償却資産などには、この特例は適用されません。

欠損金の繰戻還付

青色申告をしている中小企業者等が、前年度が黒字で今期が赤字になった場合、前年度に支払った法人税の一部を繰戻還付してもらえます。この措置は、中小企業者等の資金繰りの改善が目的です。この措置を受けるためには、資本金が1億円以下の法人であることが条件となっています。

ただし、大企業や適用除外事業者は対象外です。また、欠損事業年度の確定申告書と同時に、欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出しなくてはいけません。

交際費課税の特例

中小企業は、接待交際費として年間800万円までを損金に算入できるという措置が受けられます。もしくは、接待飲食費の50%までを損金算入するかを選択して利用することが可能です。

この措置は、法人企業の営業活動の促進や飲食店等の需要の喚起を図るために行われています。この措置を受けるためには、交際費等(得意先や仕入先などに対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用)を別途明細書に記載し、その金額を確定申告書に記入することが必要です。ただし、福利厚生費や広告宣伝費などと区別される交際費等であることが条件とされています。

設備投資や研究開発、事業変革、事業承継などに関する税制優遇

中小企業の税制優遇の具体措置には、設備投資や研究開発、事業変革、事業承継などに関する税制優遇なども多いです。中小企業の生産性向上やDXへの投資を後押しするために、さまざまな税制措置が講じられています。

この措置は、令和5年度の税制改正で決定されました。具体的な措置は、以下のとおりです。

・中小企業経営強化税制:即時償却又は税額控除10%を2年間延長

・中小企業投資促進税制:特別償却30%又は税額控除7%を2年間延長

・固定資産税の特例措置:赤字の中小企業であっても賃上げや前向きな投資を可能とする

・研究開発税制:試験研究費の税額控除等を見直し3年間延長

・DX投資促進税制:DX人材育成・確保等の見直しを行った上で2年間延長

・中小企業防災・減災投資促進税制:防災・減災に資する設備投資を後押しする特別償却18%を2年間延長

・地域未来投資促進税制:地域経済を牽引する企業の成長を促進すべく特別償却20~50%又は税額控除2~5%を2年間延長

令和5年度の税制改正における注意すべきポイント

中小企業の税制優遇は、令和5年度の税制改正により変更される部分があります。ここでは、注意すべきポイントを確認しておきましょう。

期限が迫っている税制措置が多い

中小企業の法人税率の軽減措置や中小企業経営強化税制など、多くの税制措置が令和5年度末までの期限付きです。したがって、これらの措置を有効に活用するためには、早めに計画を立てることが重要なポイントだといえます。

新たな特例措置が創設された

赤字の中小企業であっても賃上げや前向きな投資を可能とする固定資産税の特例措置や、インボイス制度導入に伴う中小・小規模事業者の負担軽減措置など、新たな特例措置が創設されることも注意点の1つです。これらの措置を利用するためには、一定の要件を満たす必要があります。

既存の税制措置が見直された

研究開発税制やDX投資促進税制など、既存の税制措置も見直されています。見直しの内容によっては、対象となる事業や設備、人材などが変更されている場合があるでしょう。したがって見直しの内容を確認し、適切に申告することが必要です。

中小企業の税制優遇を有効活用するためには税理士へ相談するのが得策

中小企業の経営を支援するために、税金の負担を軽くする制度が中小企業の税制優遇です。

具体的には、以下のような措置が受けられます。

・法人税率の軽減

・欠損金の繰越控除

・少額減価償却資産の特例

・欠損金の繰戻還付

・交際費課税の特例

・設備投資や研究開発、事業変革、事業承継などに関する税制優遇

どれも節税効果の高い措置ばかりのため、積極的に活用するのが賢明です。顧問税理士などに相談して、ぜひ有効活用しましょう。

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この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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