会計事務所のM&Aの流れとは?売却する際の注意点も解説

後継者不足や従業員の雇用継続、アーリーリタイアなどを理由に会計事務所のM&Aを検討する際は、準備や手続きの流れについて確認が必要です。売却したいときにすぐ売却できるわけではないため、一定の準備期間を設けなければなりません。また、実際の価値よりも安く売却することを防ぐために、注意点も押さえておきましょう。

ここでは、会計事務所のM&Aの流れと売却の際の注意点について解説します。

会計事務所の売却は一般的に「事業譲渡」のこと

会計事務所と言えば、一般的には税理士あるいは公認会計士が運営する個人事務所を指す。個人は株式会社ではないため、M&Aの中でも「株式譲渡」は行えない。会計事務所の事業を第三者に売却する場合は、「事業譲渡」を行う。

会計事務所のM&Aの流れ

会計事務所のM&Aは一般的に事業譲渡を指すため、ここでは事業譲渡の流れについて解説します。

売却のタイミングや目的を明確にする

会計事務所のM&Aを実行するタイミングや目的を明確にすることが先決です。売却のタイミングを誤ると、実際の価値よりも安い売却額がつく恐れがあります。また、目的が不明瞭だと買い手に対して適切な条件交渉を行えません。例えば、従業員を雇用している場合は、従業員の雇用維持や報酬アップ、既存の顧問契約を継続するなどの条件の提示を検討することもあるでしょう。適切な条件交渉、および希望価格での売却を実現するためにも、売却のタイミングや目的を明確にすることが大切です。

必要書類を集める

M&Aの手続きの必要書類はサポート会社が用意してくれますが、会計事務所の価値を算定するための書類は自ら用意する必要があります。賃借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などを用意しておきましょう。また、内容に誤りがあると、評価額の算定方法によっては正しく算定できなくなるため、内容の正誤をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

M&Aのサポート会社を探す

自分で買い手を探すことも不可能ではありませんが、相手の信頼性や事業の内容などを1社ずつ調査することは困難です。そのため、他の業種と同様にM&Aの際はサポート会社の力を借りた方がよいでしょう。M&Aのサポート会社の種類は次のとおりです。

仲介会社

仲介会社は、買い手と売り手を仲介する業者のことです。会計事務所の買収を希望する買い手の情報を数多く保有している仲介会社に相談すれば、条件を満たした買い手が速やかに見つかるでしょう。

金融機関

金融機関によっては、買い手と売り手のいずれか一方の利益を追求するアドバイザリー業務を行っています。ただし、個人の会計事務所よりも大手企業をメインに対応している金融機関が多いため、十分なサポートができるのかどうか事前に確認が必要です。

会計事務所や弁護士事務所

士業の事務所でもM&Aの仲介やアドバイザリー業務を行っている場合があります。税理士や公認会計士は会計事務所のM&Aの事情に詳しい可能性が高いでしょう。

公的機関

各都道府県にある事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所などでもM&Aを相談できます。まずは商工会議所に相談し、その後に事業承継・引継ぎ支援センターが具体的なサポートを行う流れが構築されています。

仲介業務契約を交わす

M&Aのサポートの依頼先が決まったら、仲介業務契約を交わしましょう。仲介業務契約は、買い手と売り手の交渉を円滑に進めるように中立の立場でサポートする契約のことです。なお、買い手と売り手のいずれかの利益を追求するサポートのことをアドバイザリー契約といい、この場合はアドバイザリー契約を締結します。

売却先の候補を決める

続いて、サポート会社から紹介された買い手候補の中から複数社に絞り込みましょう。企業の信頼性や事業規模など、さまざまな点をチェックしたうえで絞り込む必要があります。

トップ面談を行う

買い手候補と売り手でトップ面談を行い、顔合わせをします。双方にM&Aの意思がある場合は、基本合意締結へ進みます。

基本合意締結を行う

基本合意とは、M&Aを進めることへの合意を証明するもので、基本合意書を取り交わします。ただし、会計事務所のM&Aでは省略するケースも少なくありません。

買い手が売り手に対してデューデリジェンスを実施する

デューデリジェンスとは、買い手が売り手に対して実施する調査のことです。経営リスクや財務リスク、法務リスクなどのほか、会計事務所の価値も調査します。ただし、会計事務所のM&Aにおいては一般的な調査項目とは異なり、従業員の年齢や勤続年数、資格や経験、顧問数や顧問先の経営状態、成長性、解約のリスクなどを調査することが多いでしょう。

売却条件を交渉する

デューデリジェンスの結果に大きな問題がなく、M&Aを進めてもよいと判断できた場合は、売却額や諸条件について交渉を進めます。

最終契約

売却額や条件などについて確定すれば最終契約に進みます。売却額、条件、保証債務の取り扱いなど、全ての事項を最終契約書に記載しましょう。

支払い・クロージング

最終契約の締結後、契約書に記載した期日までに買い手が売り手に代金を支払います。また、売り手から買い手で会計事務所を譲渡するために必要な手続きおよび引継ぎを行いましょう。例えば、従業員の雇用契約、事務所の賃貸借契約などは新たに締結し直す必要があります。

会計事務所のM&Aの注意点

会計事務所のM&Aを成功させるには、「入念な事前準備でスケジュールの遅滞を防ぐ」、「顧問契約数が減って売上高が低下する事態を防ぐ」などの対策が必要です。続いて、会計事務所のM&Aを成功させるために注意しておくべきことを解説します。

早めに準備を進める

M&Aでは、サポート会社探し、買い手の選定、デューデリジェンスへの対応、交渉など、さまざまなプロセスを踏みます。各プロセスを確実に進めるためにも、早めに準備を始めることが大切です。また、後継者不足を理由にM&Aを進める場合は、「自分が60歳になった時点で後継者がいなければM&Aを行う」などタイムリミットを定める必要があります。

後継者はすぐに育つとは限らず、また優秀な人物でも経営に向いていなかったり本人に興味がなかったりする場合もあります。このようなことを踏まえると、後継者探しとM&Aの準備は同時期に進めた方がよいと言えるでしょう。

顧問契約数が減らないように対策が必要

会計事務所の実績や知名度などよりも、税理士や公認会計士の人柄で顧問契約先を選ぶ人もいます。そのため、M&Aで経営者が変わると顧問契約を解除する可能性があります。多くの顧問契約を解除されると、当初の想定よりも売上高が低くなり、買い手が見つかりにくくなることが予想されるため、「代表の税理士や公認会計士は残る」、「顧客を説得してから引退する」など対策が必要です。

会計事務所のM&Aは早めに準備を進めましょう

会計事務所のM&Aを成功させるためにも、一連の流れや注意点を押さえることが大切です。M&Aを決意したタイミングが遅くて、各プロセスに十分な時間をかけられない場合もあるでしょう。

会計事務所のM&Aを検討する際は、早めに準備を進めてください。また、信頼できるサポート会社に依頼することで、より良い買い手が見つかるでしょう。会計事務所のM&Aに強い税理士を探す際は、税理士紹介ドットコムを利用されてはいかがでしょうか。

この記事の著者

加藤良大

歴10年フリーライター。執筆実績は2万本以上。M&A、税務、法律、不動産など専 門的なジャンルの記事を数多く執筆。監修する専門家、クライアントから高評価 を得ている。

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