年収1,000万円の個人事業主が支払う税金はいくら?会社員との手取りの違い、節税対策もご紹介

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年収1,000万円の個人事業主でも、実際に手元に残る金額は思っているより少ないものです。所得税や住民税、国民健康保険、年金などの負担は会社員とは大きく異なり、同じ年収でも「手取り」に数十万円以上の差が生じることもあります。

本記事では、個人事業主が支払う税金の種類や金額の目安、会社員との手取りの違いをわかりやすく解説します。さらに、青色申告や小規模企業共済、ふるさと納税などの節税対策も紹介。税負担を抑え、効率よく手取りを増やすための実践的なポイントをお伝えします。

個人事業主が支払う税金の種類を整理しよう

まず、個人事業主が支払う税金には、どのようなものがあるのかを把握しておきましょう。各税目の概要と計算の仕組みは、以下のとおりです。

税目・保険概要計算方法・構造
所得税事業の所得(売上-経費など)にかかる国税所得金額-所得控除=課税所得、課税所得×税率-控除額。税率は5~45%の超過累進課税​。
住民税前年の所得に対してかかる地方税課税所得に一律10%程度(都道府県民税4%+市町村民税6%など)+均等割​。
国民健康保険地方自治体が運営する医療保険制度前年の所得等を基に決定。所得割・均等割・平等割など複数要素で構成​。自治体によって異なる。
国民年金(基金・iDeCo含む)自営業者等が加入する公的年金定額方式(令和7年度 1か月16,980円目安)。国民年金基金やiDeCoは任意加入、掛金額は選択肢により異なる​。
消費税(課税事業者の場合)売上に対し発生する税、 一定規模以上で課税売上高1,000万円超で課税事業者となる原則。課税売上×10%(軽減税率8%あり)、納付時に仕入税額控除可能​。

所得税

個人事業主の所得税は、1年間の「収入-経費」から各種所得控除を差し引いた「課税所得」に対して5~45%の累進課税が適用されます。申告時に税額控除なども反映し、自分で申告・納付しなくてはなりません。

住民税

所得税を計算した後の課税所得額をもとに、翌年度に地方自治体へ支払うのが住民税です。標準税率は約10%で、一定額の均等割も加算されます。

国民健康保険

国民健康保険は、医療費補助のために加入が義務付けられている保険です。前年の所得を基準に、自治体ごとに保険料が決まります。所得割・均等割・平等割など多様な組み合わせがあるのが特長です。

国民年金(国民年金基金・iDeCoも含む)

国民年金は老後のための基礎年金で、自営業者は原則として定額を毎月支払します。将来受取額に上乗せしたい場合、国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用することが可能です(掛金は任意・税制優遇あり)。

消費税(課税事業者のみ)

2年前の売上高が1,000万円を超えている場合など、個人事業主も消費税の納税義務が発生します。課税売上から控除対象仕入を引き、差額に10%(一部8%)の税率をかけて納税​します。

消費税の詳細は、以下の記事をご参照ください。

個人事業主が消費税を支払いはじめる条件と時期とは?免除される要件や支払い時の注意点などもご紹介

年収1,000万円の個人事業主が支払う税金の目安

年収が1,000万円になった場合、個人事業主はどの程度の税金を支払う必要があるのでしょうか。ここでは、支払うべき税金の目安をご紹介します。

課税所得の計算ステップ

個人事業主の課税所得は、事業売上から経費と所得控除を差し引いた金額です。例えば、年収(売上)1,000万円、経費率30%(経費300万円)、青色申告控除(65万円)というモデルケースは、以下のとおりです。

売上(1,000万円)− 経費(300万円)− 青色申告控除(65万円)− 基礎控除ほか(例:48万円)=課税所得  

シミュレーション例:1,000万円 − 300万円 − 65万円 − 48万円=587万円(モデルによって控除額が前後)​

実際のシミュレーション例

青色申告・経費率30%の条件で、各税額・手取り概算を表で整理しました。

項目概算金額
年収(売上)1,000万円
経費300万円
課税所得約570〜640万円(控除の状況により幅が出ます)
所得税約57万〜119万円
住民税  約50万〜79万円
個人事業税約20万〜35万円(業種・地域による)
社会保険料(健康保険+年金)約90万〜105万円
消費税(課税事業者の場合)約70万円(売上・仕入内容による)
手取り  約600万〜662万円(税・保険控除後、消費税含む場合はさらに減少)​

手取りは、控除内容や居住地、経費額などで異なりますが、年収1,000万円のケースでは約600〜650万円の範囲が1つの目安です。

消費税の影響

売上高が1,000万円を超えると、翌々年から消費税の課税事業者となり、課税売上の10%(軽減は8%)を売上に含めて納税義務が発生します。インボイス制度(令和5年開始)では、課税事業者でなければ取引先で消費税を控除できないため、免税事業者のメリットが薄れるため注意が必要です。

納税額は売上から控除対象となる仕入などを差し引いて計算するため、実際の負担がどの程度になるかを確認しておきましょう。

会社員との手取り比較

年収1,000万円の個人事業主の手取りは、会社員とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、両者の手取りを比較してみます。

会社員の税・社会保険料の内訳

会社員の場合、下記の費用が給与から天引きされます。

・所得税・住民税:収入から計算され、年末調整も会社が実施
・厚生年金・健康保険:会社が半額を負担し、従業員個人の負担分のみが天引き
・雇用保険や介護保険(年齢などにより):給与から控除​

会社員の社会保険料は「会社と折半払い」のため、同じ額面年収でも個人の負担は軽くなるのが特長です。

年収1,000万円会社員との比較表

実際に、個人事業主と会社員で手取りを比較すると以下のとおりです。

区分個人事業主会社員
年収1,000万円1,000万円
税金・保険料約350万円約280万円(本人負担)
手取り約650万円約720万円

個人事業主は国民年金・国民健康保険を全額自己負担するため、税・保険料合計が大きくなりがちです。

一方、会社員の場合、社会保険料を会社が半額負担するため、同じ1,000万円でも本人の天引き額は少なく、手取りが多くなります。目安値として会社員は年収の70%超、個人事業主は60〜65%程度が手取りとなるのが一般的です。

個人事業主が活用できる節税対策

個人事業主が手取りを増やすためには、節税対策が重要です。主な節税対策として、以下のようなものが挙げられます。

・経費を正しく計上する
・青色申告特別控除の活用
・小規模企業共済・iDeCoでの節税
・ふるさと納税・生命保険料控除など
・法人化による節税も検討

ここから、それぞれ解説します。

経費を正しく計上する

事業に必要な支出は正確に経費計上することで、収入から差し引きでき課税所得が減らせます。ただし家賃や通信費、光熱費、車両費などを事業とプライベートで併用している場合は、使用割合に応じた「按分計算」が必要です。

・家賃:自宅兼事務所の場合、事業で使う部屋の面積比率や時間配分で按分
・通信費・光熱費:事業用と私用の使用実態を記録し、合理的な比率で算出
・車両費:業務使用頻度や走行距離で事業用分を見積もり、按分

これらの経費は、領収書保存や按分根拠の記録が必須です。

青色申告特別控除の活用

青色申告すると、最大65万円の特別控除が受けられます。主な条件は以下のとおり

・複式簿記で帳簿をつけ、適切に保存する
・e-Taxまたは電子帳簿保存を利用して申告する

メリットは、所得が65万円分減ることで所得税・住民税・国民健康保険料も軽減できる点です。

小規模企業共済・iDeCoでの節税

小規模企業共済やiDeCoは、掛金全額が所得控除対象になり、節税と老後資金形成が両立できるため、節税対策としておすすめです。

・小規模企業共済:最大年84万円まで全額控除
・iDeCo:掛金は年額上限あり(自営業は最大81.6万円)、全額所得控除

加入時に資金準備をしつつ、確定申告で控除を申請する必要があります。

ふるさと納税・生命保険料控除など

各種控除を重複活用することで、年間の税負担を下げられます。

・ふるさと納税:寄附額から自己負担2,000円を除いた分が住民税・所得税控除
・生命保険料控除:年間最大12万円まで所得控除

これらは併用できるため、複数の制度をフル活用することで節税効果が増します。

法人化による節税も検討

利益が増加した場合は法人成りも選択肢です。個人事業主と法人では税負担構造が異なり、節税余地が広がります。

・法人税(約23%)は一定利益で所得税(~45%)より低くなる場合が多い
・役員報酬や経費を分散でき、家族を役員にして給与分散もしやすい

法人成りの目安は、年間利益700万円超が1つの判断基準です。法人化には設立費や社会保険負担が増えるため、総合的なシミュレーションが欠かせません。

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節税の注意点と税務署チェックのポイント

節税対策を行う際には、いくつかの注意点があります。ここでは、税務署のチェックポイントも踏まえ3つのポイントをご紹介します。

1.経費の過大計上はリスク大

経費を過大に計上すると税務署のチェック対象となりやすく、税務調査で発覚すれば追徴課税や重加算税・延滞税のペナルティ、最悪の場合は刑事罰にもつながります。

特に、交際費・家事関連経費の不適切な計上や領収書の改ざんなどは、調査で高い確率で指摘されます。不注意でも過大計上は脱税とみなされることがあるため、経費内容・金額・使用根拠を明確にしておくことが重要です。

2.領収書・帳簿の保管義務

領収書や帳簿は、白色申告なら「5年間」、青色申告なら「7年間」の保存が義務付けられています、保存方法は紙・電子どちらも可能だが、電子の場合は改ざん防止・検索機能など電子帳簿保存法の要件に沿って保存しなくてはなりません。

税務調査時にこれらの書類提出を求められるため、日付・金額・取引先を正確に記録しておくことがトラブル回避のポイントです。

3.税理士に相談するメリット

税理士に相談することで、最新の税制改正や個別状況に合わせた最適な節税策を提案してもらえます。法的適合性が保証されるので税務調査対策にも有効であり、申告漏れや過大計上のリスクを未然に防ぐことが可能です。

また、長期的な税務戦略や資産形成・退職金設計なども総合的にサポートしてくれるアドバイスが得られることもあるでしょう。

また、確定申告を税理士に依頼することで、コア業務に集中できるようになるなど、多くのメリットが得られます。詳細は、以下の記事でご確認ください。

確定申告を税理士へ依頼できる?メリットや注意点、費用相場などをご紹介

まとめ

年収1,000万円クラスでは、税金と社会保険料の負担が手取りを大きく左右します。

青色申告や共済制度を活用し、適正な経費管理を行うことで、会社員以上の手取りを実現することも可能です。適切な納税や節税対策の実施を行うためには、税理士への相談も視野に入れましょう。

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この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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