会社設立時には、その前後でたくさんの手続きや届け出が必要です。そのため、会社設立の大まかな流れを理解しておかなければ、どこから手を付けたらよいかわからなくなってしまうかもしれません。そこで今回は、会社設立をこころざす方に向け、会社設立の流れや会社設立後に行う手続き・届け出について解説します。
目次
会社設立時に必要な手続きのおおまかな流れを解説します。どのような手続きが必要になるのか事前に確認しておくことで、抜けもれなく実施できるようになるでしょう。
会社を設立する際には、商号(会社名)や役員報酬、資本金額といった基本事項を決定し、登記前に会社の代表印を作成しなくてはいけません。
まず会社名である社号を決定しましょう。社号は自由に決められますが、同一住所に同一名の商号は認められません。また、法務局で類似商号の有無や、不正競争防止協定に抵触しないように、有名企業との被りや、消費者が混乱する可能性がある名称になっていないかについても確認しておく必要があります。
会社の登記手続きを実施する際には、提出書類に会社の代表印を押印しなくてはいけません。そのため、登記手続きの前に、会社の代表印を作成しておきましょう。
なお、会社の代表印を作る際には、以下2点を押さえる必要があります。
この条件を満たす範囲であれば、大きさや文字、字体などは自由に決めることが可能です。
役員報酬の設定額は、会社の資金繰りに大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。役員報酬は経費計上できないため、法人税や社長自身の所得税などのバランスを考えなくてはいけません。
会社設立時には資本金額も決める必要があります。以前までは、有限会社は300万円、株式会社は1,000万円の資本金額が最低限必要だと定められていました。しかし、2006年の会社法の改正によって、これらの制限はなくなりました。(ただし、一部許認可が必要な業種については、制限がある)
そのため、資本金額は1円でも会社を設立できます。しかし、資本金額は対外的な会社の信用度を表すものであるため、慎重に決める必要があるでしょう。特に起業したばかりの会社は知名度や実績もなく、客観的に判断できる基準が少ない状況です。よって、資本金があまりにも少ない会社は、社会的信用度が低く見られる可能性は否めないでしょう。
定款には絶対的記載事項と呼ばれる、必須で記載しなくてはいけない項目があります。絶対的記載事項が記載されていない場合は、定款全体が無効になるため注意しましょう。
なお、定款の絶対的記載事項は以下の通りです。
これらを記入した後、定款認証を実施します。
定款には会社が展開する事業目的の記載が義務付けられています。このとき注意が必要な点として、定款に記載がない事業の展開が許可されないことです。したがって、将来的に実施する可能性がある事業も、可能であれば起業時に定款へ記載しておきましょう。
しかしながら、最初から先のことをすべて想定することは不可能なため、一般的には事業目的の最後に「前各号に付帯または関連する一切の事業」と加えておくことがおすすめです。
前述した、会社設立時に決定した商号も、定款の絶対的記載事項です。
会社の本店所在地も定款に必須で記載する必要があります。住所を記載する際には、最小行政区画まで記載が必要です。例えば、東京都であれば区まで記載します。
なお、このとき自宅の住所を本店所在地として登録する場合には、法人不可の物件でないことを事前に確認しておきましょう。
会社設立時には、出資財産額、またはその最低額の定款への記載が義務付けられています。例えば、株式会社の場合は、資本金額と発行済株式の総数が絶対的記載事項です。
株式会社を設立する場合は、発起人の氏名または名称、そして住所を定款へ記載しなくてはいけません。株式を保有する発起人なしでは株式会社の設立が不可能なため、絶対的記載事項とされているのです。
発行可能株式総数は、定款の絶対的記載事項ではありません。ただし、会社成立時には定款を変更して発行して発行可能株式総数を記載する必要があります。なお、会社設立時の発行可能株式総数が、発行可能株式総数の1/4以上になるような設定が必要です。
定款の作成後、会社の本店所在地を管轄する公証役場で定款認証を行います。定款の記載内容が適正であることを、第三者にチェックしてもらう必要があるからです。
定款認証が無事に終わったら、自分名義の口座に自分で資本金を払い込みます。資本金額に決まりはありませんが、100万円~1,000万円程度が目安でしょう。なお、資本金額が1,000万円を超えた場合には、初年度から消費税の課税がはじまるため注意が必要です。
会社の登記申請をするために、必要な書類を作成します。なお、登記書類の詳細に関しては、以下の記事で詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
登記に必要な書類が準備できたら、資本金の払込後2週間以内に法務局で会社設立登記申請を実施しましょう。会社設立の登記申請は、代表取締役が行う必要があります。
会社設立登記申請をした後も、さまざまな手続きが必要です。必要最低限の手続きを確認しておきましょう。
会社設立の登記手続きが終わった後は、法人口座の開設や社会保険の手続き時に必要になる登記事項証明書と印鑑証明書を取得します。法務局の窓口、またはWEBでの申請が可能です。
役員報酬は会社設立後3か月以内に決定する必要があります。前述した通り、金額を慎重に協議して決定しましょう。
会社設立の書類は、税務署や都道府県事務所、市町村役場などへ提出する必要があります。必要書類と提出期限を以下の表で確認しましょう。
提出先 | 必要書類 | 提出期限 |
---|---|---|
税務署 | 法人設立届出書 | 会社設立日から2ヶ月以内 |
青色申告の証人申請書 | 会社設立日から3ヶ月以内、もしくは最初の事業年度終了日のうちいずれか早い方の前日 | |
給与支払事務所等の開設届出書 | 会社設立日から1ヶ月以内 | |
源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書 | 特になし | |
都道府県事務所 | 法人設立届出書 | 都道府県ごとに異なる |
市町村役場 | 法人設立届出書 | 提出地域ごとに異なる |
この他にも従業員を雇用する場合は、雇用保険や労災保険の加入手続きをハローワークや労働基準監督署で実施しなくてはいけません。また、健康保険の手続きは年金事務所、介護事業など特定の許認可が必要な事業を展開する場合には、行政機関での手続きが必要です。
会社の口座は個人の口座でも問題ありません。しかし、会社の社会的使用度を上げるためにも、法人口座の開設をおすすめします。
一通りの手続きが完了したら、設立前に使った経費の会計処理も実施しておきましょう。主な費用の仕訳例は以下の通りです。
会社を設立するためには、さまざまな書類を準備し、たくさんの手続きを実施する必要があります。そのため、できるだけ早めに準備を進め、手続きがうまく進まないことも想定するなど、余裕を持つことが大切です。抜け漏れなく手続きを行うことでスムーズに会社を設立して、早いタイミングで経営に集中しましょう。