労働条件には明示義務がある?!明示事項と方法、手続きについて解説

労働条件には明示義務がある?!明示事項と方法、手続きについて解説

近年、少子高齢化の影響により、労働力不足が大きな課題となっています。そのため、多くの企業が優秀な人材の採用に苦慮している状況です。

人材を採用する際には、労働条件を明示する義務があり、労働基準法によって明示すべき項目も決められています。求職者が就職するか否かを決める重要な要素であるため、企業側は真摯に対応しなくてはいけません。

ここでは労働条件の明示義務や明示事項、実施する方法や手続きをご紹介します。

労働条件の概要と明示義務

従業員を雇用する企業には、労働条件を明示する義務があります。ここでは、労働条件の概要と明示義務についてご紹介します。

労働条件とは

労働条件とは、労働者と使用者が契約を結んで働く際に取り決められた就労に関する条件であり、賃金、労働時間、休日休暇、解雇、安全衛生などが含まれます。労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものであり、労働基準法で定められた基準は最低限のものです。

使用者たる企業は労働契約の締結に際し、従業員に対して労働条件を明示する義務があります。また労働条件に関して問題がある場合は、労働基準監督署や弁護士などに相談することが可能です。

労働条件の明示義務

労働基準法第15条により、企業側は従業員と労働契約を締結する際、賃金や労働時間、その他の労働条件を明示する必要があります。労働条件の明示義務は、従業員の権利保護と労使間の適正な関係を促進するための重要な要素です。

明確な情報提供により、従業員が自身の労働条件を把握し、適切な判断や選択を行えるようになります。

労働条件の明示事項は大きく2つ

労働条件の明示事項は、大きく以下の2つが存在します。

・絶対的明示事項
・相対的記載事項

ここでは、それぞれの内容について確認しておきましょう。

1.絶対的明示事項

労働条件の絶対的明示事項とは、労働者に対して必ず明示されるべき情報であり、労働関連法規に基づいて定められたものです。ただし、労働条件の絶対的明示事項は地域によって異なる場合もあります。したがって、地域の労働法や労働関連法規を確認することにより、具体的な明示事項を把握することが重要です。

具体的な絶対的明示事項としては、以下のようなものが挙げられます。

雇用契約の内容

雇用契約の種類や労働形態(正社員、パート社員、アルバイトなど)、労働時間、休暇制度、給与形態、試用期間、解雇条件など、雇用契約に関する重要な事項を明示する必要があります。

労働時間と休日

労働時間の制度(週40時間労働制や週休2日制など)、所定労働時間、休憩時間、法定休日、有給休暇制度など、労働時間と休日に関する規定を明示しなくてはいけません。

賃金と給与

基本給、時間給、残業手当、休日出勤手当、賞与、昇給・昇格制度など、労働者が受けるべき賃金や給与に関する情報を明確に伝える必要があります。

労働条件の変更

労働条件の変更についての手続きや通知義務を明示し、労働者が変更について正しく知ることができる仕組みづくりが必要です。

労働関連法規の遵守

労働基準法、労働者派遣法、労働安全衛生法などの労働関連法規に基づく権利や義務について明示し、労働者が自身の権利を理解し、法的保護を受けることができるようにする必要があります。

2.相対的記載事項

労働条件における相対的記載事項とは、絶対的に明示される必要はないが、従業員に対して通知されるべき情報のことです。従業員と企業側の合意や商習慣に基づいて定められる場合があります。

相対的記載事項は、従業員の業務への参加意識や働きやすさに影響を与える重要な要素です。企業側はこれらの情報を適切に労働者に通知することにより、従業員の動機づけや働きやすさを高められるでしょう。

また従業員は自身の権利や福利厚生制度、キャリアの展望などについて正確な情報を得ることによって、自身のキャリアプランや労働条件に関する適切な判断を行えるようになります。相対的記載事項の明示により、従業員と企業間の信頼関係を築きやすくなるでしょう。

相対的記載事項の事例は、以下のとおりです。

福利厚生制度

企業によっては退職金制度や厚生年金、健康保険、財形貯蓄、社員割引制度、教育研修の提供など、さまざまな福利厚生制度を設けている場合があります。また退職手当に関する事項や食費、作業用品などの負担に関する事項も対象です。これらの制度に関する詳細や条件は、従業員に対して相対的に明示される必要があります。

労働環境や安全対策

従業員の安全と健康を守るための安全対策や労働環境の整備、職業訓練に関する情報なども相対的記載事項の1つです。具体的には労働災害の予防策や適切な作業環境、必要な保護具の提供などが該当します。

任務・業務内容

労働者が担当する業務や任務の範囲、役割、責任に関する情報も、相対的記載事項です。表彰や制裁に関する事項も含まれます。これにより、従業員が自身の役割や責任を正確に理解し、業務遂行に集中しやすくなる効果が期待できるでしょう。

給与に関する一部内容

臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項も、相対的記載事項として記載する必要があります。

参考:厚生労働省/就業規則を作成しましょう

参考:e-GOV法令検索/労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

2024年以降に追加される労働条件の明示事項

2024年4月1日以降、労働基準法の改正により追加される労働条件の明示事項は、以下のとおりです。

・就業場所
・業務の変更の範囲
・更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容
・無期転換申込機会および無期転換後の労働条件
・労働時間・休憩時間などに関する事項

ここでは、それぞれの内容について解説します。

就業場所・業務の変更の範囲

従業員の就業場所や業務の変更が、どの範囲内で行われるかどうかを明示する必要があります。具体的な就業場所や業務の変更範囲を明示することにより、変更があった場合も従業員が労働条件を正確に把握することが可能です。

更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容

労働契約の更新に関する上限が設けられる場合、その上限の有無と内容を明示しなくてはいけなくなります。通算契約期間の上限や更新回数の上限がある場合には、それを労働条件として明示することが必要です。

無期転換申込機会および無期転換後の労働条件

労働契約の期間制限を越えた従業員が、無期転換を申し出る権利を保障する必要があります。権利の行使に関する申込機会や、無期転換後の労働条件についても明示しなくてはいけません。

労働時間・休憩時間などに関する事項

労働時間や休憩時間に関する事項の明示も必要です。具体的には労働時間の範囲や休憩時間の取り扱い、残業手当の支払い条件、休日や休暇の取得条件などが挙げられます。

労働条件を明示する方法

労働条件を従業員に明示する場合、どのような方法で実施する必要があるのでしょうか。ここでは、労働条件を明示するおもな方法をご紹介します。

書面・口頭・SNSなどで実施

従業員に対して労働条件を明示する方法は、書面の交付または口頭で行うことが一般的です。労働基準法第15条により、労働契約を締結する際、従業員に対し労働条件を明示しなければならないと規定されています。したがって、原則として絶対的明示事項については、書面の交付により明示する必要があることを覚えておきましょう。

なお2019年4月1日からは、FAX・電子メール・SNSなどによる方法も使えるようになりました。また、労働条件通知書の交付と労働契約書の締結により、どちらか1通あるいは両方の書面をあわせて労働条件すべてを明示する必要があります。

労働条件通知書と労働契約書の違い

労働条件通知書は、労働者に対して一方的に労働条件を通知するための書面であり、労働契約時に交付される必要があります。

通知書は労働者に対して情報を提供する役割を持ちますが、労働者の同意や署名は必要ありません。一方、雇用契約書は、雇用契約を労働者と雇用主との間で取り交わす書面です。

労働条件や雇用条件に関する内容が記載されており、労使間の合意を確認する役割を果たします。雇用契約書には通常、労働者と雇用主の双方の署名や捺印が必要です。

労働条件通知書と雇用契約書は、内容は似ているが法的な効力や交付の仕方に違いがあります。労働条件通知書は一方的な通知であり、雇用契約書は労使間の合意を確認する契約書としての性格を持つのが特徴です。ただし、具体的な法律や地域の労働法によって異なる場合があるため、詳細な規定を確認しておく必要があります。

労働条件の変更手続き

労働条件を変更することは可能です。ただし一方的なものではなく、双方の合意が必要である点に注意しなくてはいけません。また労働条件の変更には、法律や契約によって定められた手続きや期間が存在する場合もあるため、法的な要件を遵守しながら変更を行う必要があります。

一般的な労働条件の変更手続きの流れは、以下のとおりです。

協議と合意

まず労働条件の変更を希望する側が、従業員と協議を行う必要があります。変更の理由や内容を明確にし、合意を目指します。

提案書または通知

変更内容を文書化し、提案書や通知書として従業員に提出します。このとき変更の理由、内容、労働者に与える影響などを明示することが必要です。

従業員の意見聴取

従業員には変更提案に対して意見を述べる機会が与えられます。企業側は意見や懸念を真摯に受け止め、協議を進めることが必要です。

合意の確認

労働者と雇用主が変更内容について合意に達した場合、変更の合意書を作成します。書面には変更内容、労働者および雇用主の氏名、合意日などを明記する必要があります。

変更を実施

合意書に基づいて労働条件を変更します。変更後の労働条件は、労働契約書や労働条件通知書などに反映されるほか、就業規則の変更についても労働者へ通知しなくてはいけません。

労働条件は企業の生産性や競争力に影響する重要な要素

労働基準法により、企業側は従業員と労働契約を締結する際、賃金や労働時間、その他の労働条件を、書面や口頭、SNSなどを用いて明示する義務があります。明示すべき事項には絶対的明示事項と相対的記載事項があることに加え、2024年4月1日以降には新たに追加される事項もあるため注意が必要です。

労働条件は企業の生産性や競争力に影響する重要な要素であるため、専門家と相談し慎重に調整と手続きを行う必要があります。本記事の内容が参考になれば何よりです。

この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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