2023年度税制改正大綱によって法人が受けるおもな影響とは?

2023年度税制改正大綱によって法人が受けるおもな影響とは?

2023年度(令和5年)税制改正大綱には、法人に影響が出そうなものもいくつかあります。しかし、改正内容が多く、かつ個人・法人が一緒くたになっているため、具体的にどのような影響があるのかを把握するのは簡単なことではありません。

そこで今回は、2023年度税制改正大綱によって法人が受けるおもな影響についてまとめました。自社に関係のありそうな内容を把握し、早めに対処するための一助になれば何よりです。

なお、本記事が書かれたのは2023年3月のため、今後も改正内容が増える可能性はあります。財務省のWebサイトなどを適宜確認し、最新情報を定期的に見直しましょう。

参考:財務省/令和5年度税制改正の大綱

法人税関連の改正

まず、2023年に実施される法人税関連の改正として、以下の3つをご紹介します。

・研究開発費における特別償却の対象資産範囲を拡大
・オープンイノベーション促進税制の拡充
・先導的人材投資に係る税制措置の実施

自社に関係のある内容かどうか確認しておきましょう。

研究開発費における特別償却の対象資産範囲を拡大

2023年度税制改正大綱において、研究開発費の特別償却の対象となる資産の範囲が拡大されます。本制度の目的は、産業構造の変化に対応し、研究開発の質と量の向上を図ることです。

特別試験研究費の額にかかる税額控除制度における、特別試験研究費として認められる資産の範囲は、これまでは研究開発に直接使用されるものに限られていました。しかし今後は、研究開発に間接的に使用されるものも含めるように拡大されます。

例えば、研究開発に使用する機器や装置のほかに、研究開発に必要な電力や水道などの供給設備や、研究開発に関する情報の収集や分析に使用するコンピュータやソフトウェアなども特別試験研究費として認められるため確認が必要です。これにより、特別試験研究費にかかる税額控除の対象となる資産の取得に対して、その取得価額の30%に相当する額を所得税法における所得の金額から控除できるようになります。

参考:国税庁/No.5441 研究開発税制について(概要)

オープンイノベーション促進税制の拡充

オープンイノベーション促進税制とは、スタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、国内の事業会社またはその国内CVC(Corporate Venture Capital:コーポレート・ベンチャー・キャピタル)が、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される制度です。

本制度は、2024年3月31日までの期限付きで導入されていました。しかし2023年度の税制改正において、期限を2026年3月31日までに延長するとともに、対象となる株式の範囲を拡大される予定です。本制度の目的は、スタートアップ企業の成長を支援し、イノベーションの創出を促進することだといわれています。

拡大される対象となる株式とは、発行法人以外の者から購入により取得した株式で、その取得により総株主の議決権の過半数を有することとなるものが該当します。これは、スタートアップの出口戦略を多様化する観点から、事業会社がスタートアップをM&Aするタイミングにおける発行済株式の取得に対しても、所得控除を講じることを意味します。

参考:経産省/オープンイノベーション促進税制

先導的人材投資に係る税制措置の実施

2023年度税制改正大綱において、企業による先導的人材投資にかかる税制措置が実施されます。「先導的人材投資」とは、企業が高等教育機関の設立に寄附することにより、優秀な人材の育成や地域活性化に貢献することを目的とした税制措置のことです。

税制措置とは、法人が大学、高等専門学校、または一定の専門学校を設置する学校法人の設立を目的とする法人に対して支出する寄附金であり、その設立のための費用に充てられる指定寄附金に対して、法人税の所得控除や税額控除を講じる制度です。

本制度の目的は、企業が先導的に人材育成に取り組むことを促進し、産業界のニーズに応える高度な人材の供給を拡大することだといわれています。ただし今回、新たに導入されますが、2026年3月31日までの期限付きで適用される見込みです。

資産税関連の改正

資産税関連の改正においては、以下の3点が重要です。

・有価証券の譲渡所得に対する源泉徴収の義務化
・事業用土地の固定資産税の見直し
・非上場株式の評価方法の変更

それぞれの内容について解説します。

有価証券の譲渡所得に対する源泉徴収の義務化

有価証券の譲渡所得に対する源泉徴収の義務化とは、2023年10月1日以降に発生する有価証券の譲渡所得について、譲渡者に対して譲渡価額の20%を源泉徴収することを義務付ける制度です。本制度は、非上場株式や特定口座で「源泉徴収なし」を選択した場合に適用されます。

なお源泉徴収された税金は、確定申告時に所得税や住民税として還付される場合があるため覚えておきましょう。

事業用土地の固定資産税の見直し

事業用土地の固定資産税の見直しとは、事業用土地の固定資産税評価額を下げることにより、固定資産税の負担を軽減する制度です。本制度は、新型コロナウイルスの影響によって事業用土地の価格が下落したことを考慮して、2023年度と2024年度に限って適用されます。

事業用土地の固定資産税評価額は、3年に1度の評価替えによって決まりますが、本制度では評価替えを実施する年以外でも、事業用土地の価格の変動に応じて評価額を下げられる点が特徴です。

非上場株式の評価方法の変更

非上場株式の評価方法の変更とは、非上場株式の相続税や贈与税の評価基準を見直すことです。本変更は、2023年度から適用されます。

非上場株式の評価方法は、原則的評価方式と特例的評価方式の大きく2つに分類されます。

まず原則的評価方式とは、非上場株式の評価において、一般的に用いられる評価方式のことです。原則的評価方式には、類似業種比準方式と純資産価額方式の2つがあります。

類似業種比準方式は、同業他社の株価をもとにして、配当金額、利益金額、純資産価額の3つで比準して評価する方法です。一方、純資産価額方式は、会社の貸借対照表における純資産の金額を株式数で割って評価します。どちらの評価方式が適用されるかは、会社の規模や株主の関係などによって異なるため、適宜判断しなくてはいけません。

次に特例的評価方式とは、非上場株式の評価において、原則的評価方式の代わりに適用される評価方式のことです。特例的評価方式には、配当還元方式があります。

配当還元方式とは、株式の発行会社の規模にかかわらず、同族株主以外の株主が取得した株式に適用される方法です。この方法においては、株式の配当金を将来永久に受け取ると仮定して、現在価値を求めて評価します。特例的評価方式は、配当金が安定している場合や、類似業種比準方式や純資産価額方式で評価すると不公平になる場合に有利です。

参考:国税庁/No.4638 取引相場のない株式の評価

消費税関連の改正

消費税関連の改正

インボイス制度の導入に伴い、消費税の申告・納付の仕組みも変わります。消費税の改正内容とは、消費税のインボイス制度に関する改正のことで、2023年10月1日から適用される予定です。

インボイス制度とは、消費税の納付額を決める際に、売上に対する消費税の額を明記したインボイス(請求書)を必要とする制度であり、脱税や二重課税を防ぐために導入されます。

おもな改正内容は、インボイスの発行や受領の義務化、インボイスの内容における記載要件の明確化、インボイスの不発行や不受領に対する課税処分の強化などです。

また、中小企業などに対しては、インボイス制度の移行期間として、売上の消費税の2割を納付税額とする特例措置が設けられます。

なお、インボイス制度については、以下記事の内容もあわせてご確認ください。

インボイス制度が中小企業・個人事業主に与える影響とは?税理士に依頼するべき理由を解説

参考:国税庁/インボイス制度の概要

国際課税関連の改正

国際課税については、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)のデジタル課税第二の柱・グローバル・ミニマム課税の導入に対応するための改正が行われます。グローバル・ミニマム課税とは、国際的に活動する企業が、低税率国に利益を移転して税負担を軽減することを防ぐために、国際的に最低限の課税水準を設ける制度です。

日本の親会社が持つ外国子会社の所得に対して、国際最低課税額に対する法人税と特定基準法人税額に地方法人税を課すよう改正されます。国際最低課税額とは、外国子会社の所得に対して、OECDが定めた最低税率(15%)を適用した額のことです。

一方、特定基準法人税額とは、外国子会社の所得に対して、日本の法人税率(23.2%)を適用した額です。また、本制度に関連する情報申告制度も創設され、2023年10月1日から適用されます。

参考:財務省/令和5年度税制改正⼤綱

電子帳簿等保存制度の見直し

国税関係帳簿書類の電子化をより推進するために、2023年度税制改正の大綱における納税環境整備の一環として、電子帳簿等保存制度の見直しが実施されます。

電子帳簿等保存制度とは、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存することを認める制度のことです。本制度は電子帳簿保存法に基づいており、利用することによって、経理のデジタル化や業務効率化が図れます。

おもな改正点は以下のとおりです。

・電子帳簿等保存制度の対象となる帳簿書類を拡大
・スキャナ保存制度の対象となる帳簿書類を拡大
・電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存を義務化
・電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する猶予措置や緩和措置の適用

電帳法の見直しについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

電子帳簿保存法の7つの改正ポイントとは?法律の概要や対象範囲も解説

参考:国税庁/電子帳簿等保存制度特設サイト

税制改革に適切な対応をするためには税理士への依頼が得策

2023年度税制改正大綱における改正において、法人が影響を受けそうなものは以下の通りです。自社に関連しそうなものについては、早めに準備しておく必要があります。

法人税関連の改正
・研究開発費における特別償却の対象資産範囲を拡大
・オープンイノベーション促進税制の拡充
・先導的人材投資に係る税制措置の実施  

資産税関連の改正
・有価証券の譲渡所得に対する源泉徴収の義務化
・事業用土地の固定資産税の見直し
・非上場株式の評価方法の変更   消費税関連の改正
・消費税のインボイス制度に関する改正

  国際課税関連の改正
・グローバル・ミニマム課税の導入に対応するための改正

  電子帳簿等保存制度の見直し

ただし、今後も改正内容は増える可能性があるため、定期的に財務省のWebサイトなどを確認し、最新情報を把握することが大切です。また、税制の改正に応じた適切な対応を行うためには、税理士へ依頼するべきでしょう。

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この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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