会社設立するか個人事業主でいくか、メリット?デメリット?タイミングは?

個人事業主の方は、どこかのタイミングで「このまま個人事業主のままでいくか、法人化するか」の判断に迫られると思います。法人化(法人成り)するとさまざまなメリットがある反面、デメリットもあるため悩むところでしょう。

そこで今回は、個人事業から法人化を検討している方に向け、法人化のメリット・デメリット、法人化するタイミングなどを解説します。

法人化するメリット

個人事業主が法人化する主なメリットを紹介します。

会社の信用度が上がる

個人事業主から法人化することで、社会的信用度が上がる点は大きなメリットです。

法人化することで会社の商号や住所、代表者、資本金、役員構成などが可視化されるため、第三者から見たときの信用度が大幅に上がります。また、企業によっては個人事業主に仕事を出さない場合もあるため、その点においても法人化したほうが有利だといえるでしょう。

個人で運転資金がまかなえない場合は法人化するべきです。銀行からの融資や第三者から資金を募る場合には、社会的信用という視点において会社を設立したほうが有利になります。

法人ならではの節税メリットがある

法人化しがほうが、個人事業主でいるよりも税制上のメリットがたくさんあります。個人事業主の所得税は累進税率になっているため、儲けが増えるほど支払う税金が高くなりますが、法人の事業税は一定税率です。そのため、大きな売り上げを上げる事業を営む場合には、法人化したほうが節税メリットは高いでしょう。

法人化するその他の節税メリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 給与所得控除が使える:自身の給与を役員報酬とすることで、会社の必要経費化できる
  • 経費化できるものの幅が広い:自宅を社宅化、保険の福利厚生化、自動車の社用車化といったように、個人事業主では経費化できないものが経費化できる
  • 損金の繰越控除:大きな損失が出た際、その損失を翌年度以降の所得と相殺し10年間繰越ができる
  • 消費税の免税効果:個人事業主の2年と併せてさらに2年、最大で合計4年の消費税免税効果が得られる
  • 家族への給与:家族へ給与を支払うことで、オーナーの所得税や住民税を分散できるため、節税効果につながる

資金調達がしやすくなる

資金調達がしやすくなる点も法人化するメリットです。個人事業主が銀行から融資を受ける際には貸借対照表の提出を求められますが、実際は作成していない方がほとんどでしょう。そのため、銀行側は個人事業主の経営状況を把握しづらくなり、融資してよいかどうかの判断が難しくなり、保証人を要求される場合もあるでしょう。

一方で法人の場合は、貸借対照表だけでなく損益計算書なども活用して厳正に財務管理ができますので、銀行側が融資をする相手の信用度を判断しやすくなります。

また、事業を大きく拡大していく見込みがある場合も法人化したほうが得策です。事業を拡大すれば収益が上がる可能性はありますが、それに伴うリスクも大きくなります。そのため、外部からの資金調達というメリットを享受してリスクヘッジを行うためにも、法人化するべきでしょう。

優秀な人材を集めやすくなる

法人化したほうが優秀な人材を雇用しやすくなります。我が国は少子高齢化の影響で年々労働人口が減少傾向です。そのため、一般企業においても採用活動に苦慮しています。

求職者側も安定した雇用を求める傾向が強くなっているため、きちんとした企業で正社員になりたいと思う方が多いです。したがって、個人事業主が事業に必要な人材を集めるのは非常に困難なため、法人化したほうが優秀な人材を集めやすくなるでしょう。

なお、オーナーのみで事業運営がNGの場合は法人化が必要です。事業を運営するために必要なノウハウや知識、またスキルなどがない場合には、共同経営者やスタッフが必要になります。個人事業主として人を集めて経営をしていくことは困難なため、法人化に踏み切ったほうが有利でしょう。

決算タイミングが自由に選べる

法人化すると決算日を自由に選択することが可能です。個人事業主の場合、事業年度は1月~12月と規定されており、確定申告で決算申請を行うことになります。しかし、法人の場合は事業の繁忙期と決算タイミングをずらすなど、業務の平準化を実現することも可能です。

法人化するデメリット

個人事業主が法人化する際には、以下の点に注意しましょう。

会社設立および運営コストが増加

法人化するときには会社設立時と事業運営時のコストが個人事業主より多く必要です。法人化するためには登記や資本金が必要になります。また、法人住民税など個人事業主には発生しない税金の支払いも必要になるので、コストが大幅に増加する可能性がある点に注意が必要です。

社会保険料の負担が増加

法人化すると、社会保険への加入が義務化されるため、社会保険料の負担が増加します。法人では社会保険の負担が個人事業主よりも重くなり、従業員と会社で折半する必要があるので、会社側のコスト負担が自ずと増加するのです。

事務作業の増加

法人化すると個人事業主のときには発生しなかった数多くの事務作業を実施する必要があるため、そのための工数が増加します。会計処理や社会保険、労働保険、役員関連の手続きなど、複雑な事務作業が増えますので、個人レベルで処理することが困難です。したがって、事務作業を負担する従業員の雇用や専門家への外注化なども視野に入れる必要があります。

交際費の扱いに注意が必要

法人化すると、個人事業主のように交際費をすべて必要経費として計上できなくなります。

法人の交際費は半分が損金扱いになりますが、飲食分に限定される点が特徴です。また、資本金が1億円以下の企業の場合、最大800万円まで損金扱いにできます。

どの程度の利益が出たタイミングで法人化するべきか

法人化するべきかどうかについて、所得税の税率が大きく変更する300万円、800万円、1,000万円、2000万円でシミュレーションしてみました。(役員は1名で試算)

*正確な数字のメリット・デメリットをご確認されたい方は、顧問の税理士さんにご相談下さい。

利益が300万円の場合

個人事業主 法人
所得税 10万円程度 法人税など 7万円程度
住民税 19万円程度 所得税 10万円程度
事業税 5000円程度 住民税 19万円程度
合計 30万円程度 合計 36万円程度

所得が330万円以下では、そもそも法人税率のほうが高く、法人化の節税メリットはありません。

利益が800万円の場合

個人事業主 法人
所得税 79万円程度 法人税など 7万円程度
住民税 60万円程度 所得税 79万円程度
事業税 26万円程度 住民税 60万円程度
合計 164万円程度 合計 146万円程度

利益が800万円の場合、法人の利益がゼロになるように自身の給与を役員報酬にすることで、法人化したほうが約19万円の節税効果があります。そのため、法人化したほうが節税面でのメリットが高いです。

利益が1,000万円の場合

個人事業主 法人
所得税 118万円程度 法人税など 7万円程度
住民税 78万円程度 所得税 118万円程度
事業税 36万円程度 住民税 78万円程度
合計 232万円程度 合計 203万円程度

利益が1,000万円の場合、法人の利益がゼロになるように自身の給与を役員報酬にすることで、法人化したほうが約29万円の節税効果があります。よって、法人化したほうが節税面でのメリットが高いでしょう。

利益が2,000万円の場合

個人事業主 法人
所得税 443万円程度 法人税など 7万円程度
住民税 178万円程度 所得税 443万円程度
事業税 86万円程度 住民税 178万円程度
合計 706万円程度 合計 628万円程度

利益が2,000万円の場合、法人の利益がゼロになるように自身の給与を役員報酬にすることで、法人化したほうが約78万円の節税効果があります。そのため、法人化したほうが節税面でのメリットは非常に高いです。

事業規模や利益に応じた判断が必要

個人事業主が法人化をする際には、事業規模や利益などを考慮し適切な判断を下す必要があります。法人化すれば節税面のメリットがある反面、手続きや運用コストなどが増大するデメリットもあるので注意が必要です。今回紹介したメリット、デメリットなどの各種ポイントを考慮して、最適な方法を選択しましょう。

この記事の著者

税理士紹介ドットコム編集部

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