会社の設立や店舗を開業する際などには、開業日をいつにするのかを決めなくてはなりません。開業日を決める場合には、いくつかのポイントに留意する必要があります。また、法人と個人事業主では、すこし内容が異なるため注意が必要です。ここでは、開業日はいつがよいのか、法人・個人事業主が決めるときのポイントや開業届の手続きなどについてご紹介します。
開業日の定義については、法人と個人事業主で異なるため、事前に把握しておくことが大切です。以下で、それぞれの開業日が概要について解説します。
法人の場合は「設立日」を開業日とすることが一般的です。設立日とは、法人設立関係書類を法務局に提出し受理された日です。書類に不備がなければ、提出日が会社設立日となります。特定の日を設立日にしたい場合は、その日に申請書類を提出することで設定することが可能です。
個人事業主の場合、開業日を自由に決められます。店舗オープン日や最初の売上が立った日とすることが多い傾向です。また、税務上のメリットを考慮して開業日を決めることもあります。決めた開業日を「個人事業の開業届」に記載して税務署に提出します。
ただし、以下の点に注意が必要です。
・登記や税務上の手続きとは別に、実際に事業活動を開始した時点から事業主としての法的責任が発生する ・準備段階で取引相手が存在する場合、登記が済んでいなくても事業主としての責任を負う可能性がある |
実際に、開業日を決める場合、いつにすればよいのでしょうか。ここでは、開業日を決めるときのポイントを法人、個人事業主、それぞれのケースについてご紹介します。
法人の開業日は、法務局に設立登記を行った日、つまり会社の歴史の始まりを示す重要な日です。さまざまな法的・会計的な影響を持つため、慎重に選択しなくてはなりません。以下で、法人が開業日を決めるときのポイントを確認しておきましょう。
2日以降に会社を設立する場合、その月の法人住民税(均等割)が切り捨てられ、節税効果が期待できます。例えば、4月1日に設立すると4月分の均等割が課税されますが、4月2日以降に設立すれば4月分が免除されるため有効活用すべきです。この効果は特に小規模な法人にとって重要な検討事項といえるでしょう。
法人が開業日を決める際には、大安や一粒万倍日、天赦日など、縁起の良い日を選ぶことが可能です。法的な影響は特にありませんが、経営者の心理的な面や取引先への印象を考慮して選択されることがあります。
特に、日本の伝統的な商慣習を重視する業界では、このような配慮が好印象を与える可能性があるため覚えておきましょう。
会社の設立日によって初年度の決算期間が変わるため、慎重に検討しなくてはなりません。例えば、3月決算を希望する場合、1月1日に設立すると初年度は3か月の変則決算となりますが、4月1日に設立すれば12か月の通常決算となります。
決算期間の長さは税金の計算や財務諸表の比較可能性に影響を与えるため、事業計画と合わせて検討することが重要です。
設立日から決算日までの期間によって、消費税の課税事業者になるタイミングが変わる可能性がある点にも注意が必要です。新設法人の場合、設立1期目と2期目は免税事業者となりますが、設立時の資本金が1,000万円以上の場合は設立1期目から課税事業者となります。
また、設立後2年以内に年間売上高が1,000万円を超えると、その時点で課税事業者となります。そのため、事業規模や成長予測を考慮して設立日を決定することが重要です。
法務局の開庁日(平日)のみ設立登記が可能です。したがって、土日祝日や年末年始などは避ける必要があります。
また、登記申請から登記完了までに数日かかる場合があるため、余裕を持ったスケジュール設定が必要です。特に、月末や年度末近くに設立を予定している場合は注意しなくてはなりません。
個人事業主の開業日は、実際に事業を始めた日を基準に、ある程度自由に設定できます。しかし、税務申告や各種手続きの基準となるため、慎重に選択することが必要です。ここからは、個人事業主が開業日を決めるときのポイントをご紹介します。
個人事業主が開業日を決める場合、最初の売上が立った日や店舗のオープン日など、実際に事業を開始した日を選ぶのが一般的です。税務署や行政機関に対して、事業の実態を明確に示す必要があることが、その理由といえます。
ただし、準備期間中の支出を経費として計上したい場合は、それらの支出が発生した日を開業日とすることも可能です。重要なことは、選択した開業日に合理的な理由があり、それを説明できることです。
年の初めに近い日を開業日にすると、個人事業税の事業主控除額が多くなるため注意しなくてはなりません。例えば、1月1日に開業した場合は年間の控除額(通常290万円)が全額適用されますが、7月1日に開業した場合は半額の145万円となります。
したがって、特に初年度の税負担を軽減したい場合は、年初に近い日を選ぶことが有利です。
開業日から2か月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があるため、この期限を考慮して開業日を決めることも重要です。青色申告はさまざまな税制上の優遇措置があるため、多くの個人事業主にとって有利です。
例えば、1月1日に開業する場合、3月1日までに申請書を提出する必要があります。期限を過ぎないように、開業日の設定と同時に申請の準備も行うことが重要です。
開業日より前の支出は「開業費」として資産計上されるため、開業準備にかかる費用の扱いを考慮しなくてはなりません。開業費は原則として5年間で均等に償却しますが、税務上は全額を初年度の経費として計上することも認められているためです。
大きな準備費用がある場合は、これらを初年度の経費として計上できるよう開業日を設定することで、税負担を軽減できる可能性があります。
個人事業主が開業日を決める場合、個人の好みで誕生日や大安などの縁起の良い日を選ぶことも可能です。法的な影響はありませんが、事業主自身のモチベーションや記念日としての意味合いを持たせられます。
また、顧客や取引先に対して印象的な開業日を伝えることで、ブランディングの一環として活用することも可能です。
業種によっては、許認可取得日や資格登録日以降を開業日にする必要があるため注意しなくてはなりません。例えば、飲食店の場合は保健所の営業許可取得後、不動産業の場合は宅地建物取引業の免許取得後が開業日となります。
これらの許認可や資格の取得にかかる時間を考慮し、現実的な開業日を設定することが重要です。
開業日が決まったら、期限内に開業届を提出しなくてはなりません。ここでは、開業届の手続きと提出期限について解説します。
開業届とは、個人事業主が事業を開始する際に税務署に提出する重要な書類、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。事業所得、不動産所得、山林所得を生じる事業を開始した際に税務署に提出しなくてはなりません。
開業届は事業を開始した日から1か月以内に提出する必要があります。ただし、提出期限が土日祝日の場合は翌平日が期限です。期限内に提出することで、適切に事業開始を税務署に報告できます。
開業届は、事業主の住所を管轄する税務署に提出します。自身の住所地を確認し、適切な税務署を選択することが重要です。開業届の提出方法には以下の選択肢があり、自身の状況や便宜に応じて最適な方法を選択できます。
・税務署窓口での直接提出 ・郵送による提出 ・e-Taxを利用したオンライン提出 |
なお、開業届の提出には「個人事業の開業・廃業等届出書」と本人確認書類が必要です。本人確認書類にはマイナンバーカードなどが使用できます。
開業届は個人事業主にとって重要な手続きです。事業開始から1か月以内に提出することを忘れずに、適切に手続きを行わなくてはなりません。開業届の提出が遅れても罰則はありませんが、できるだけ期限内に提出することがおすすめです。
また青色申告を希望する場合は、開業届と併せて「所得税の青色申告承認申請書」も提出する必要があります。開業日は事業主が自由に設定できますが、実際の事業開始日から大きくずれないよう注意が必要です。
提出方法や必要書類について不明な点がある場合は、管轄の税務署に確認しましょう。適切な手続きを行うことで、円滑に事業を開始できます。
開業日を決める際には、法人は設立日、個人事業主は事業開始日を基準としますが、節税効果や許認可、税務手続きの期限、縁起の良い日などを考慮することが重要です。法人は設立登記日が開業日となり、個人事業主は開業届を事業開始から1か月以内に提出する必要があります。また、税務上のメリットを得るための計画的な日付設定や、青色申告の申請期限にも注意し、適切な手続きを行いましょう。
法人、個人事業主のどちらも、開業日の設定は税務や経理に大きな影響を与えるため、慎重に検討することが重要です。不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、自身の事業計画に最適な開業日を選択し、スムーズな事業スタートを切ることが可能です。
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