【会計事務所編】スタッフへの承継と事業売却のどちらがお得?選び方のポイントも解説

会計事務所をスタッフに継承するか第三者に事業売却するか迷っている方は多いのではないでしょうか。経営者がより多くの利益を得られる方を選ぶのであれば、事業売却がおすすめです。ただし、どちらの方法にもメリットとデメリットがあるため、十分に確認したうえで自身に合った方を選びましょう。ここでは、会計事務所のスタッフへの承継と事業売却の違いについて詳しく解説します。

従業員承継とは

従業員承継とは、自社の従業員や役員に会社や事業を引き継ぐことです。家族や親族に事業を承継することを「親族内承継」といいますが、後継者に相応しい人物がいないために従業員承継を検討する会計事務所が少なくありません。ただし、従業員にも後継者に相応しい人物がいないケースもあります。引退を検討する際は、従業員や親族、第三者など承継先ごとの違いについて確認しておくことが大切です。

事業売却とは

事業売却とは、第三者に事業を売却することです。株式譲渡と事業譲渡に大きく分けられますが、会計事務所は一般的に個人事務所を指すため、ここでは事業譲渡について解説します。会計事務所の買い手は、テナントや従業員、設備、顧客などをそのまま引き継ぐため、すぐに会計事務所を始めることができます。また、売り手は事業売却で得た利益を新たな事業の立ち上げやリタイア後の生活の資金として使えます。

会計事務所をスタッフに承継するメリット

会計事務所に在籍している税理士や公認会計士などに承継することには、次のメリットがあります。

会計事務所の事情に精通している

会計事務所で働いている従業員は、事務所特有の事情に精通しているため、従業員同士の連携や業務の配分などを適切に行える可能性が高いでしょう。第三者は事情を把握していないため、従業員の負担が大きい経営をするリスクがあります。

事務所の文化を引き継げる

第三者に事業売却した場合、事務所特有の文化が変わる可能性があります。買い手企業の従業員が事務所で働くことになるパターン、会計事務所から買い手の会社へ移籍するパターンがあり、相互に影響を受けます。従業員に承継する場合は、事務所の文化が大きく変わらずにこれまで通りにスムーズな運営ができるでしょう。

候補者が多い

事業売却の場合、限られた候補の中から買い手を選定する必要があります。一方、従業員承継の場合は、多くの候補者の中から承継する人物を選定できます。広い視野を持って後継者を選定できれば、より良い承継に繋がるでしょう。

会計事務所をスタッフに承継するデメリット

会計事務所をスタッフに承継する場合、次のようなデメリット・リスクが考えられます。

売却額が低くなりやすい

事業承継によって利益を得たい場合は、従業員承継においても従業員から売却益を受け取る必要があります。しかし、売却額は1,000万円を超えるケースが多いため、従業員の状況によっては支払うことが難しいでしょう。また、それだけの代金を支払ってまで会計事務所を承継したくないと考える従業員が多い場合、従業員承継は断念せざるを得ません。

経営手腕のある人物が現れないリスクがある

どれだけ会計事務所の事情や文化を理解しており、これまで通りに運営するとしても、経営手腕がなければ売上高は低下してしまいます。モチベーションは高くても、経営手腕がある従業員がいないケースは少なくありません。

親族から反対される場合がある

従業員承継を選択すると、親族から反対される可能性があります。親族に後継者に相応しい人物がいるかどうかは別として、「事業は親族が引き継ぐべき」といった考え方の場合はトラブルになるかもしれません。親族の反対を押し切って従業員に承継した結果、親族との関係が悪くなる恐れもあるため、なるべく円満な解決を目指すことが大切です。

会計事務所を事業売却するメリット

会計事務所を売却先は、大企業から中小企業、個人までさまざまです。会計事務所を事業売却するメリットについて詳しく見ていきましょう。

より多くの売却益を得られる可能性がある

売却先が法人の場合、従業員承継よりも多くの売却益を得られる可能性があります。大きな資金力を持ち、会計事務所のポテンシャルや売上高を高く評価している場合、多額の売却益を得られる場合もあるでしょう。ただし、会計事務所の売却額は年間の顧問報酬や2~3年間の平均営業利益などをベースに計算することが多いため、必ずしも高額で売却できるとは限りません。

後継者を育てる労力を削減できる

従業員承継の場合、従業員を後継者として育てる必要があります。事業売却であれば、後継者を育てる必要がないため、時間的コストを大幅に削減できます。また、経営手腕のある人物に売却できれば、会計事務所を長く残すことができるのもメリットです。

会計事務所を事業売却するデメリット

会計事務所を事業売却すれば、より多くの売却益を得られます。ただし、次のようなデメリットがあることも考慮する必要があります。

買い手の見極めが難しい

長く関わってきた従業員であれば、仕事に対する意識や経営手腕などがわかります。しかし、全く関わってこなかった企業・個人の信頼性は見極めることが難しいでしょう。M&Aのサポート会社に依頼すれば、信頼性がある程度高い企業・個人を紹介してくれますが、最終的には売り手が買い手の信頼性や事業規模、売上高などを判断しなければなりません。トップ面談や条件交渉の段階で、会計事務所の承継先に相応しいかどうか見極めましょう。

顧客が離れるリスクがある

顧問契約先を選ぶ際は、実績や知名度よりも相性や人柄などを優先する傾向があります。そのため、会計事務所を事業売却して経営者が代わると、それを機に顧問契約を解除されるケースが少なくありません。単発の依頼も減り、収益が悪化する可能性があるため、事前に対策した方がいいでしょう。

一方、従業員承継の場合は、経営者が代わったとしても経営方針が変わらない限り、顧問契約を次々と解除されるリスクは低いと考えられます。

より多くの売却益を得られる可能性があるのは「事業売却」

従業員への承継と事業売却のうち、より多くの利益を得られる可能性が高いのは「事業売却」です。ただし、利益だけではなく、顧客との関係や親族の意見なども踏まえてベストな方法を選ぶ必要があります。また、従業員承継と事業売却のいずれの場合も承継先の信頼性や経営手腕などを見極める必要があります。

利益以外も踏まえてベストな方法を選ぼう

会計事務所を承継する際は、どの方法で誰に承継すれば最も良い結果になるのかを考えましょう。従業員承継と事業売却はいずれも一長一短で、優劣を決めることはできません。より多くの利益を得たいのであれば事業売却を選ぶべきですが、顧客との関係を考えると従業員承継を選んだ方がよいかもしれません。このように、会計事務所の承継についての悩みはM&Aのサポート会社に相談することをおすすめします。

M&Aのサポートを行っている税理士であれば、会計事務所の事情に詳しいため、より充実したアドバイスやサポートができるでしょう。信頼できる税理士を探したい、M&Aのサポート実績が豊富な税理士に相談したい方は、税理士紹介ドットコムをご活用ください。

この記事の著者

加藤良大

歴10年フリーライター。執筆実績は2万本以上。M&A、税務、法律、不動産など専 門的なジャンルの記事を数多く執筆。監修する専門家、クライアントから高評価 を得ている。

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