IFRSとは?概要やメリット・デメリット、導入方法などを解説

IFRS

近年、グローバル化が進むなかで、企業の財務情報を国際的に比較・評価できる仕組みとして注目されているのがIFRSです。世界140か国以上で採用される国際標準であり、財務の透明性や投資家からの信頼性向上に寄与します。

ここでは、IFRSの概要や特徴、導入によるメリット・デメリット、さらに導入手順を解説します。

IFRS(国際財務報告基準)とは

IFRS(International Financial Reporting Standards)とは、国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standards Board)が策定する世界共通の会計基準です。日本語では「国際財務報告基準」と訳され、企業の財務報告における透明性と比較可能性を確保することが目的とされています。

現在、EU諸国をはじめ140か国以上で採用されており、グローバル企業の財務報告において国際標準として広く認められています。​

IFRSの基本概要

IFRSは、1970年代に発足した国際会計基準委員会(IASC)が策定したIAS(国際会計基準)を前身とし、2001年に組織改編されたIASBがそれを引き継いで制定されました。「原則主義」と「貸借対照表重視」が特長です。

原則主義とは、細かい規定よりも会計処理の基本原則を重視し、実務上の判断を企業に委ねる考え方です。一方、日本の会計基準(J-GAAP)は細則主義的であり、細部まで細かく定められています。

また、IFRSは貸借対照表を中心に資産・負債から企業価値を評価する点も特徴です。

目的と制定の背景

IFRS制定の目的は、グローバル経済下で企業が共通の会計基準に基づいて財務報告を行い、国際的な投資判断や企業比較を容易にすることです。

1970年代に国際会計基準委員会が発足し、各国の異なる会計基準を調和させる動きが始まりました。その後、1980年代の国際資本市場の拡大とともにIOSCO(証券監督者国際機構)がIASCを支援し、信頼性を高めました。

2005年にはEU域内の上場企業にIFRSの適用が義務化され、世界的に普及が進展。その背景には経済のグローバル化と資本市場の国際連携の深化があり、投資家が国境を越えて企業を評価しやすい環境を整備することが重視されました。

IFRSの主な特徴

IFRSを導入する前には、どのような特徴があるのかを把握しておく必要があります。

ここでは、IFRSの主な特徴をご紹介します。

原則主義による柔軟な会計処理

IFRSは原則主義を採用しており、会計処理について細かい数値基準や詳細な規定ではなく、根本的な原理・原則だけを示します。企業は個々の実態や状況に応じて柔軟な会計方針を自ら策定し、経営の実態をより適切に財務諸表に反映できる点が特徴です。ただし自由度が高い分、会計処理の根拠を合理的に説明する責任もともない、重要な会計方針は開示しなくてはなりません。

公正価値(時価)に基づく評価

IFRSでは、資産や負債の評価に「公正価値(時価)」を重視しています。取得原価ではなく、報告時点の市場価値や経済的価値に基づいて評価する手法で、企業の財務状況をよりリアルタイムに反映できるのがメリットです。公正価値評価により、経済環境の変化や市場価格の変動を財務諸表に即時反映することが可能となります。

財務情報の国際的な比較可能性

IFRSは世界中のさまざまな国に適用されているため、財務情報の国際的な比較がしやすくなっているのも特徴です。会計基準の統一により、投資家やステークホルダーは国境を越えて複数企業の財務データを同じ基準で比較・評価できます。そのため、グローバルな資本市場での資金調達や投資判断が合理的に行いやすくなります。

日本におけるIFRS導入状況

日本企業において、IFRSはどの程度浸透しているのでしょうか。ここでは、日本におけるIFRSの導入状況について解説します。

任意適用企業の増加

日本では2010年から上場企業によるIFRSの任意適用が認められ、導入企業は年々増加傾向です。2025年9月末時点でIFRSを適用済または適用を決定した日本企業は約300社に達し、特に大手上場企業を中心に広がりをみせています。

当初は、移行コストや他社の様子見姿勢もあり進展は緩やかでしたが、政府の普及促進策なども後押しし適用企業が着実に増加中です。

導入が進む業界と背景

IFRS導入が進むのは、商社、製薬、IT、電機、自動車などグローバル展開比率の高い業界です。この背景には、海外投資家の獲得、M&A(企業買収・統合)時の会計基準統一、グローバル資本市場での競争力確保への意識の高まりがあります。

特に、海外子会社やグループ企業が多い業種ほど、連結決算を国際基準に揃えるメリットが大きく、決算業務の効率化や海外取引先・投資家への信頼向上につながっています。

IFRS導入のメリット

IFRSを導入するメリットは、以下のとおりです。

・投資家・海外市場への信頼性向上
・グローバル展開企業における財務報告の効率化

ここから、それぞれ解説します。

投資家・海外市場への信頼性向上

IFRSを導入することで、企業は財務情報の透明性と一貫性を高め、国内外の投資家や取引先からの信頼性を大きく向上させることが可能です。国際的に統一された基準で開示されるため、海外投資家にとって比較・理解しやすい財務報告となり、グローバルな資金調達のハードルも下がります。そのため、海外からの直接投資や資本市場での信用向上が期待でき、企業ブランド価値アップにもつながるのがメリットです。

グローバル企業における財務報告の効率化

グローバル企業がIFRSを導入することで、世界の子会社やグループ会社が同一基準で財務情報を集約できるため、連結財務諸表の作成・報告業務が大幅に効率化されます。その結果、拠点間での会計方針の統一や、経営数値の比較が容易になり、経営判断の迅速化やリスク管理の高度化も実現するのがメリットです。また、取引先や海外子会社とのコミュニケーションコストも抑えられ、グループ全体の経営効率が向上します。

IFRS導入のデメリット・課題

IFRSを導入する際には、デメリットや課題もあるため、事前に把握しておきましょう。

導入コストと運用負担の増大

IFRSの導入に際しては、システム改修や新規導入、外部専門家への依頼、社員研修や社内プロジェクト運用など、多岐にわたるコストが発生します。また、会計方針やシステム変更への対応に長期間を要することが多く、移行完了まで年単位の準備が必要となる場合もあるため注意が必要です。

さらに、導入後も基準の頻繁な改定や、IFRS対応と国内基準対応の二重処理、書類作成や注記のための事務負担が増大し、管理体制の強化や業務マニュアル整備も求められます。

会計判断の裁量が広くリスクも増える

IFRSは原則主義を採用しているため、経理実務者や経営陣の会計判断の裁量が大きくなります。会計方針や評価方法の選択肢が多いため、判断理由の説明責任や監査対応などの負担も増加し、会計処理の一貫性確保やガバナンス強化が重要です。

一方で、裁量の広さが「恣意的な会計処理リスク」や、不適切な開示による評価ダウン、虚偽記載リスクにつながる懸念も指摘されています。

IFRS導入のステップ

IFRSを導入する場合、以下のステップを踏む必要があります。

・導入準備と社内体制の整備
・会計方針とシステムの見直し

ここから各ステップについて解説します。

導入準備と社内体制の整備

IFRS導入の第一ステップは、導入方針の策定と影響度調査を進め、プロジェクト体制を整えることです。

経理部門だけでなく、IT部門や人事部門、各事業部門を巻き込んだプロジェクトチームを組成し、経営層の強いリーダーシップのもと全社横断的に取り組む必要があります。グループ内(親会社・子会社)の現状把握や課題洗い出しを進め、その結果をもとにIFRS導入のロードマップ(計画表)を策定することが重要です。

会計方針とシステムの見直し

次のステップは、既存の会計方針とIFRSとの差異を詳細に比較・分析し、グループ共通の会計方針を設計することです。また、業務プロセスや財務会計システムもIFRS対応へ見直しが必要となり、システム改修やデータ収集方法の刷新なども実施しなくてはなりません。

導入前にはIFRS基準での財務諸表作成をシミュレーションし、不足する業務プロセス・社内マニュアル・研修体制を整備のための準備期間も不可欠です。

まとめ

IFRSは、企業の財務情報を国際的に統一するための会計ルールであり、グローバルな資本市場での信頼性や透明性を高める役割を担います。世界各国で導入が進み、日本でも大企業を中心に採用が広がっている状況です。

導入にはコストや運用負担といった課題もあるものの、国際競争力の強化や財務報告の効率化など、多くの企業にとって重要な経営基盤となりつつあります。そのため、IFRS導入時には、専門家への相談を視野に入れましょう。

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この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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